森の古本市

 

森の中には広場があり、ある秋の休日、そこで古本市が開かれていた。片隅に差し込む木漏れ日のもとに本が並べられている。多くはありふれた本だったが、木漏れ日の照明による効果のためか、どの本もどことなく上品に、あるいは貴重そうに見えた。僕は『ノーブル鉄道の三人の技師』という題名の絵本を買った。作品についても作者についても何一つ知らない。でも表紙の絵がとてもよかった。窓の向こうに蒸気機関車が煙を吐き出しきて走るさまが描かれている。機関車はずっと遠くにあって小さく、部屋には誰もいない。たったの300円だった。
古本市にいる間、珍しい黄色い蝶があちこちで飛び交うのを見かけたが、あるいは気のせいだったかもしれない。