突き刺され貫かれた都市

突き刺され貫かれた都市にたどり着いたとき、僕はその奇妙な俗称の由来をただちに理解した。街の住人が全員、身体のどこかしらを何かしらで突き刺され貫かれていたのだ。長い槍のようなものに右肩を貫かれたまま平然と歩く青年、眼窩に矢が刺さったまま物を売っている年老いた男、手のひらに太い針のようなものを刺したまま広場を駆け回っている子供がいた。誰もが痛みを感じているように見えず、傷口から血が流れているわけでもなかった。
彼らはみな野蛮で、残虐で、知的に未成熟で、醜かった。腕にいっぱい毒々しい斑点を浮かべていたり、背中が異常に曲がっていたり、発育不良の子供などが多く目につき、誰もが不健康そうで、何かしらの病を抱えているかのようだった。身体を突き刺され貫かれていることが影響しているのかはわからない。彼らはめったに自らの欲望を抑制しない。いたるところで異常で恥知らずな、出来事が発生していた。その光景はさながら狂える画家が幻想と瘴気のはざまで描いた群像劇のようだった。
丘陵に沿って、大きな積み木をでたらめに地面に埋めたみたいに、建物が雑然と立ち並んでいる。丘の頂上には大きな石像があって、それは翼の生えたある未知なる怪物をかたどった像なのだが、それもまた例に漏れず丸く膨らんだ腹部を大きな槍のようなもので突き刺されていた。槍の刃先は分厚い身体を貫いて背びれの横から飛び出していた。この都市を象徴する怪物は不気味な笑みを浮かべながら、昼も夜もその場所から呪われた都を見下ろしているのだ。ところで宿泊したホテルの支配人は首を尖った木片のようなもので貫かれていた。

どうして僕はこんな土地に何日も、何週間もとどまっているのだろう。ホテルの窓から風景を眺めながら僕は自分にそう尋ねた。単に他に行くべき場所がない、そのことも理由ではある。でもそれだけではなかった。いったいどうしたことだろう、私が最近、街の人々のあの痛ましい、忌まわしい傷口にに、以前ほどの嫌悪感を覚えなくなっているのは。ある種の誘惑のようなものをさえ、感じてはじめているのは。
これまで何度か人から身体のどこかを突き刺すことを勧められた。僕は返答を先送りにしている。窓の下の道路で子供たちが奇妙な遊びに興じていた。彼らもみな身体のどこかを異物によって突き刺され、そしてそれを少しも気にしていない。まるで自分の肉体の一部であるかのように。
断るべきだろうか、でも僕に本当に拒絶の意思はあるのだろうか。遠くの丘の頂上では、あの翼の生えた怪物が今日も街を見下ろしている。あの醜悪な彫像に対しても、以前にはなかった親しみの念のようなものが沸き上がりつつあるのを、僕は否定できない。
いずれにしてももう少しだけ、この呪われた街で、生活を続けてみるつもりだ。