秋吉台へ

思い立って秋吉台秋芳洞へ。朝5時42分の始発に乗り、美祢駅に着いたのは7時前。でも秋芳洞行きのバスが来るのは8時15分。仕方がないので駅の周り歩き回って時間をつぶした。平日なので高校生が多い。バスが来たので乗る。そして目的地へ。

平日の朝一番なので、秋芳洞周辺には誰もいない。

人けがなくていいんだけど、なさすぎて寂しくなるほどだった。

洞窟にももちろん一番乗りで、貸し切り状態だった。入り口をくぐったとたんに涼しくなり、水が流れる音が聞こえ、青っぽい水が川に注いでいて、そして大きく口を開ける洞窟。

この時点ですっかり興奮して、来てよかったという気分になった。調子に乗って写真を撮りまくった。それにしても秋芳洞はすごい、こんなすごい場所が県内にあったとは…と一人で感嘆しながら歩いていた。とはいっても小学校の時に一度来たことはあるんだけど。かなり時間をかけて通過した。

 

そのあとは秋吉台カルスト台地を目指す。徒歩で林を抜けて、駐車場に着いた。そこから眺めるカルスト台地はすごくて、天気も良くて(良すぎて暑かった)また満足した。雲が影を作るさまが、とてもよい。

 

さっそくカルスト台地を歩き回る。しばらく歩いて妙見原という広場へ。歩きっぱなしだったから、その時点でまだ午前10時過ぎぐらいだったのに空腹を覚えて、それでベンチに座って持ってきたお弁当を食べた。ごはんと梅干しとカップヌードル、そんな粗末な食事でも、初夏の快晴の中、雄大な景色を眺めながら食べるのは気分がよかった。


そのあとはベンチに横になって昼寝をする。そうだ、カルスト台地の真ん中で昼寝するために僕はここへ来たのだ。ぐっすり眠りこむことはさすがにできなかったけれども、ただ横になって目を閉じているだけで、満足感がすごい。ろくに人のいない台地の真ん中で眠る、こんなに贅沢なことはない。今日は一日中ここにいたい……と思った。でもその思いは後にくつがえることになる。

昼になって、あまりに日差しが熱いので、とてもじっとしていられず、また歩き回った。剣山に登り、さらに「西の西山」というところに登った。とんでもない傾斜の中に細い道が伸びているのを遠くから眺めていると、そこを歩いてみたいという気持ちが沸き起こり、それで実際に登ったのだった。大変だった。暑かった。飲み物も尽きかけていた。熱中症になって倒れたらどうしようと思いながら頂上へ。

 

もうそのころにはくたくたで、どこかでまた寝そべりたかったのだが「西山」にはベンチもないし、座れる場所もなくて、さっきまでは一日中いようと思っていたのに、あまりにはしゃぎすぎて疲れていたし、暑いし飲み物もないので、まだ元気なうちに帰ることにした。下りはだいぶ楽だったけど、何度か足首をひねった😇

また秋芳洞まで戻ったとき、入洞チケットを失くしていた。暑いのでしょっちゅうワイシャツを脱いだり着たりしていたので、胸ポケットに入れていたチケットをどこかに落してしまっていたのだった。チケットがないと再入洞できない。つまりこの暑さのなかを、外の道路を歩いてバス乗り場まで戻らなくてはならない。それはあまりにしんどいので、だめもとで受付の人に聞いてみたところ、購入したことを証明できるものがあればかまわない、ということだったので、d払いの支払い履歴の画面を見せたら、それでいいということだったのでよかった。それにしてもバーコード払いにしておいてよかった。レシートとかだったらたぶんそれも捨てるか失くすかしていた。

この広大な台地のどこかに眠る僕のチケット……🥺

再び洞内をくぐり、朝とは違ってずいぶん人がいて、涼しいし、何度見ても神秘的で、また写真を撮りまくってしまう。行きには気づかなかったでっかい植物を見つけた。

そして4時のバスに乗って新山口駅まで。駅の近くでホテルを予約していたのだ。すぐにチェックインしようかと思ったが、部屋に入ると絶対に風呂に入りたくなるだろうし、風呂から上がるとエアコンの効いた部屋でベッドに寝そべりたくなるだろうし、そうすると夕食のために再び外に出ることがひどくおっくうになるだろう、と考えたので、またしばらく歩いてどこか食事ができるところを探した。すると新山口駅の中にうどん屋があったので、そこでうどん定食を食べた。おいしかった。写真を撮っておけばよかった。食べ終えてから思い出した。食事の写真とかまめに撮れる人はすごいと思う。

それからホテルにチェックインしてお風呂に入った。そのあと19時過ぎごろベッドに横になってたらいつの間にか眠っていて、起きたら22時だった。そのあと歯を磨いてから23時ごろにまた寝て、何度か目を覚ましながら、朝の7時に起きた。合計で10時間以上は寝ている。じつは前日は2時間半しか眠っていなかったので(一度目が覚めてから寝付けなかったのだ)、そんな寝不足の状態で何時間もカルスト台地を歩き回ったので疲れるのも無理はないのだが、合計したら2日分ぐらいは寝ているのでまあいいかと思った。

2日目は予定など何もなく、何もすることが思いつかなかったのだが、地図を見ていたところ小郡文化資料館というのを見つけたので、そこに行くことにした。とんでもなく暑い猛暑日で、もう歩くだけで暑くてうんざりしてきて、それでもいちおう資料館には行ったのだが、そこであの種田山頭火が住んでいたというの碁中庵が近くにあるということを知り、最近青空文庫で、山頭火の著作をまとめて全部読んで、かなり気に入っていたので、せっかくだからそこにも行ってみることにした。

資料館からおよそ1キロ弱、静かな住宅街を歩いてたどり着いた碁中庵。

想像以上に良いところだった。平日の午前中だったので完全に無人で、静かだった。そしてけっこう立派な家で、裏は林になっていて、静かそうですごく良さそうな環境だった。住みたいと思った。

井戸があるのもよい。

碁中庵の近くには休憩所があった。建物の中は無人で、畳の座敷があり、山頭火の写真などが展示されていた。訪れた人はここで自由に過ごすことが許されている。

一人で畳に寝そべってしばらく目を閉じていると、開いた窓から鳥と虫の声が聞こえてきて、他には何も聞こえず静かで、とても安らかな気分になった。思いつきでやって来た割には、そしてお金が1円もかからない割には、これは満足感の高い場所だった。

それから新山口駅に戻り、12時過ぎの電車で下関へ帰る。短い旅だったがやはり旅は良い。お金とか時間がなくても、無理をしてでも旅には出たほうがいいと思った。