サモア

午後になると風はろくに吹かず、島は淀んだような熱気に包まれる。
森の奥で一人の少女が笛を吹いていた。祖父が彼女のために作ってくれた、竹でできた横笛だった。鳥の鳴き声を真似た短い旋律を何度も繰り返している。少女にとって鳥は友人であり、音楽の先生でもあった。彼女は誰よりも上手に笛によって鳥の声を再現した。
少女の頭上で分厚い扇状の葉が揺れた。そのひそかな動きは他の草木へと伝わり、森中に広がった。ざわめく森は様々な音とリズムを響かせながら一つの巨大な楽器となって笛の音を伴奏した。
音は風のように昼下がりの島を吹き抜けていった。ハンモックに揺られて休む婦人も、木の実を齧っていたリスも、枝にとまって休む青い瞳の鳥も、みなその音楽に耳を澄ませながら、ゆっくりと青空を横切る太陽の下で、つかの間の眠りに落ちた。