2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

4頭の青い猫

日に日に家に動物が増える…、同居人があちこちからいろんな動物を連れてくるせいだ。彼女はたんなる多頭飼いの域を大幅に超えて、もはや、動物を飼育することが一種の依存症のようになっているのだ。猫や犬、タヌキやリス、ヤギや猿、家のありとあらゆる空間…

溶岩のある部屋

迷路のように入り組んだ廊下の一角に、部屋があった。中に入ると、壁にかかった溶岩のポスターが目に入った。オレンジ色の溶岩が画面いっぱいに映っている。見ていると、まるで実際に溶岩のすぐそばのいるみたいに、身体に熱を感じた。部屋の片隅に小人がい…

私は書物を閉じた

読書があまり楽しめなかったと感じた。物語はひたすら長く、その長さに必然性もなく、終盤になるにつれて内容は支離滅裂になった。文体は最初のほうと終わりのほうとではまるで別人のようだった。でもこういうことはありうる。一人の人間が、数百万字に及ぶ…

暗い夜

夜中、コンビニに行った帰り、外が異様に暗かった。街灯はすべて消えていて、信号さえ死んでいる。車は一台も走っていない。建物も道路もガードレールもすべてが黒い綿で覆われたみたいに真っ黒だった。歩道を歩いていると、顔まで真っ黒な姿をした自転車に…

リンゴの写真はどこへ行ったのか

テーブルの上にリンゴがあった。それを眺めていると、昔のことを思い出した。昔に住んでいた部屋で、テレビ台の上になんとなくリンゴを置いておいたことがあった。そのとき、そこにリンゴが一つあるだけで、自分の部屋がまるで別の場所に変わったような気が…

雪の海岸にて

12月のある朝、珍しくこの地方に大雪が降った。僕は海岸へ散歩に出かけた。家のすぐ目の前が海岸なのだ。本当にすぐ目の前、玄関を出て10歩も歩けば、すでに砂浜に立っている。海岸を散歩することは僕の習慣である。早朝に、あるいは日没後に、ときには午後…

醜い7人組バンド

そのバンドのメンバーは7人いて、7人全員が醜くて、それもちょっとやそっとの醜さではなかった。世界で最も醜い7人を集めたみたいだった。そのうえ全員のファッションセンスが終わっていて、みんなそれぞれ変なトレーナーとか、変な帽子とか変な耳飾りとかを…

冬の朝の遠くの鐘の音

朝、庭のビオトープに氷が張っていた。ガラスみたいな薄い氷を割って、水に手を入れたとき、中に生き物はもういないことを思い出した。生き物はずっと前にいなくなってしまったのだ。だからこれは今ではビオトープとは呼べない。水と草と石が入っているだけ…

青白い駅

今日駅で後ろを歩いていた人が言っていた、この駅もずいぶん寂れたねえ、と。確かに駅はずいぶん変わった。昔を知る人が久しぶりに訪れたら、その変わりように驚くに違いない。かつてはこの駅は結構にぎわっていたのだ。広い構内にいろんな店があり、大勢の…