2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

面接に行って、絵に描かれる

小倉南区にあるイタリア料理店のアルバイトの面接を受けにいたときのことだった。店長が自ら僕を面接した。一通りのやりとりを終えた後、店長は「じゃあ最後にちょっと絵を描きますんで」と言って、手元にあったA4サイズほどの白い紙に鉛筆で僕の絵を描きは…

懐かしいブログ

今日は2010年ごろに見かけたブログのことが懐かしくなって、もう一度読みたくなりましたが、URLもわからないし情報もなく、どうすればいいのかわかりませんでしたが、ためしに検索してみたところ、あっさり見つかりました。探していたのは、警備員として働く…

瞼の暗闇が、とても暗いこと

今日は変わったことの何もない一日だった。嬉しいこともなければ、ストレスを覚えることもなかった。起伏に乏しい時間がただ流れてゆくだけの平凡な一日。こんな日は意外と、人生にそう何度もあるわけではない。夜、入浴と夕食を終えて、ソファにもたれてぼ…

私は真珠

毎日一枚ずつ新しい布をまとうように、私の肉体は新しい色に更新される。でもその色は目に見えない。あたりが暗すぎるのだ。私自身でさえその色を目にしたことがない。洗われた卵のように澄みきった、滑らかな虹色の光沢がそこにあるはずなのに。いつかこの…

赤いテープの部屋

それは友人というほど親しくはないが顔を合わせると結構長く話し込むという類の知り合いであり、今夜も僕はバーでその男に出くわし、お酒を飲みながら話していた。僕はの職業も年齢も、名前すらも知らなかった。都会で人と付き合うとき、そうした情報は意外…

シェアハウスの思い出

かつてシェアハウスで暮らしていた。そこでは住人がしょっちゅう入れ替わった。いろんな人がつぎからつぎへとどこからともなくやって来ては去っていった。いちばん短い人は、1日しかとどまらなかった。その人物は、シェアハウスに一歩足を踏み入れるやいなや…

入学式の朝

午前4時過ぎに目が覚めて、そのあと眠れなかったので寝室を出た。リヴィングでカーテンを開けて外を眺めると、外はもちろんまだ暗く、どの家の窓にも明かりは灯っていない。なぜか心細くなり、コーヒーを作って飲んだ。夜が明けて朝になるまではあと数時間、…

ものすごい雨

4月は憂鬱な季節。だから今日も会社を休んだ。こうやって欠勤を続けているといずれクビになるのだろうか、でもそれも悪くはない。朝早く目覚めた僕は、ベッドの中で横になったまま、鳥の鳴き声を探っていた。鳥の声が聞こえてきたらベッドを出ようと思ったの…

夜中の電話

そういえば夜中に電話がかかってくる夢をみたなあ、と思って、そのことについて考えていると、だんだんそれが夢ではなく現実のような気がしてきて、念のためにスマートフォンの着信履歴を確かめてみると、実際に夜中に着信はあった。そして僕はそれに応答し…

這いまわる蛇

床中を無数の蛇が這いまわっている幻覚を見るようになって、ベッドから起き上がれず、外に出られなくなり、大学に通うこともできなくなったのは春のことだった。あれ以来何度の春が過ぎただろう。あのときは真剣に死ぬことを考えていたのに、なんだかんだで…

ある悲愴なお菓子作り

4月なのにどこか冷え冷えとしたキッチン。卵や小麦粉や砂糖をボウルの中でかき混ぜながら、僕はずっと泣いていた気がする。いや、たぶん実際には泣いてはいなかったのだが、少なくとも涙は流さなかったはずだが、つまり身体のなかで泣いていたのだ。涙がもし…