雨のブラックホール

雨の午後、ベランダにブラックホールが出ていた。ソフトボールほどのサイズの小型のもので、雨粒はみんなそのブラックホールに吸い込まれてしまって、だからコンクリートの地面は全く濡れていなかった。空から真っ直ぐ降り注ぐ雨は、地面の近くで急に折れ曲がったようになってその黒い球体のほうへ集まっていた。
窓を開けて外に出てみると、身体が引っぱられるような力をわずかに感じたが、特に吸い込まれたりはせずに済んだ。雨粒より重いものは吸い込めないらしい。僕は乾いたコンクリートに仰向けに寝そべってみた。雨は顔や身体に触れる直前にカーヴしてみんな避けてゆく。僕はそのまま少し眠った。