海からの帰り道

子供たちは砂浜で石を拾い集めて遊んでいた。特に、ガラスが水や砂に削られて半透明の石と化したいわゆるガラス石が気に入ったらしい。僕はそれらの透明な石がもともとはガラスだったことを子供たちに説明したのだが、鋭く尖ったガラスの破片が波にさらされて丸くなる、ということにどうしても納得できないらしく、僕が嘘をついていると思ったようだった。どれぐらい時間が経ったら破片がそうなるのかと問い詰められ、僕もそんなことまでは知らないので適当なことを答えてごまかした。

僕と子供たちと一緒になって石を拾った。ユイは途中からガラス石ばかり探していた。弟のケイはガラス石だけでなく、それが何らかの理由で興味を引かれるものであれば、どんなものだろうと拾ってビニール袋に入れていた。
夕方が近づいたので、僕は子供たちにそろそろ帰ろうと言ったが、彼らはまだ帰りたくない、と騒ぎ、僕と妻は苦労してそれをなだめた。夏休み中にもう一度海に来ることを約束して、子供たちはようやく帰ることに同意したのだった。その時刻にも砂浜はいぜんとして込み合っていて、笑い声や歓声があちこちで上がり、人々はいかにも平和そうに、海水浴を満喫していた。

でもやっぱり二人とも、ひどくくたびれていたらしく、車に乗り込むとすぐに眠ってしまった。僕は妻と話しながら運転していたのだが、彼女もまた前触れもなくいきなり眠り込んでしまい、それで僕は一人で黙々と車を走らせた。そういう家族みんなが寝静まって一人だけ起きている、という時間が、僕は結構好きなのだった。その孤独感は、誰もいないところで一人きりでいるときのそれとは少し違う感じがする。ラジオでは親が小さな子供を殺したというニュースを報じていた。早朝、まだ眠りこんでいるところを包丁で胸を刺したのだという。