中学校の頃の自分が校庭で遊んでいるところを、遠くから眺める夢をみていた。中学生の僕は、同級生に対してずいぶん無遠慮に横柄にふるまっており、あんなのでよく嫌われなかったものだと思う。僕はその光景に対して懐かしさを感じているが、そもそもそのような場面が本当に現実に過去に起こったのかどうか、考えてみるとよくわからなくなった。
目が覚めたときは午前2時49分で、当然ながら部屋は真っ暗であり、しばらく目を閉じていたが、再び眠ることはできなかった。すると窓の向こうから悲鳴のような女の声が聞こえてきた。隣の部屋の住人が窓を開けたまま、おそらくはアダルトビデオのようなものを見ているのだ。その住人はいつも同じ帽子をかぶっている薄汚い男で、毎日朝早くから働きに出ている様子なのに、しょっちゅうああやって夜中に音を出す。たまに見かけるが、どうやっても45歳より下には見えない。
僕はベッドに横になったまま、いつかインターネットのどこかで見た、独身のまま中年を過ぎると狂う、という記事を思い出していた。そのときは「狂う」という表現のあいまいさと過剰さが馬鹿馬鹿しく感じられて、記事にはろくに目も通さなかったが、それはあの隣人の男にふさわしい言葉ではないかと思った。深夜に窓を開けっぱなしにして大音量でアダルトビデオの音声を流すという行為は、確かに狂っているとしか表現できない気がする。
しばらく目を閉じていたがやはり眠ることはできず、次に時計を見たときには4時を過ぎていた。女の金切り声はまだ続いていた。イヤフォンをするとかホワイトノイズを流すとか、音から逃れる方法はいくつかあったが、今日はあえてそれをせず、というかする気にならず、ひたすら聞き続けていた。そして眠れないまま、心の中で暗い感情がすくすくと育っていくのを感じていた。