砂嵐の海

窓に海を映して電車は走っていた。8月の午後、日差しは明るく、気温は天文学的に上昇し、外は異常気象めいた暑さらしいが、車内は冷房が効いていて涼しく、僕は肘をついてぼんやりと外を眺めていた。目を閉じてみたところ、想像以上に自分が眠気を覚えていることに気づいて、瞼の裏の暗闇には今見ていた海の残像が浮かんでいたが、その海面は輝く明るい青色ではなく、電波の届かないテレビが映し出す砂嵐画面のような、揺れながら重なりあうく白と黒の点と線に覆われていて、僕はしばらくそれに見とれた。目を開けたとき、窓の外に海はなく、電車はとっくに海岸沿いを通過していて、僕は自分がいつの間にか眠っていたことを知った。