崩れかけの研究所 (Crumbling Laboratory)

ひみつ研究所の続き)

壁が揺れ地面が波打つ。それでも男は目を覚まさない。寝室の床にへばりつくように横たわり、両腕を抱き込んだ胎児のような姿勢で、穏やかな寝息を立てながらひたすら眠り続けていた。いつもとは違ってその眠りは安らかだった。口元には微笑みさえ浮かんでいた。やがて崩れ落ちた天井が降って男はその下敷きになった。

事故後、瓦礫から遺体が取り出された。全身に傷を負っていながら、その死に顔は奇妙に安らかだった。口元には笑みの余韻が残っていた。遺体とともに数冊のノートも見つかった。そこには彼の研究の過程が、細かい字でページをびっしりと埋め尽くすようにして、あますところなく記録されていた。表紙には「永遠の、そして最後の眠りへ」と記されている。