マッド・ギアの隠れ家 (Mad Gear Hideout)

午後の遅い時刻、古い神社の前を通りかかった。何となく鳥居をくぐり、境内を歩きまわっていると、神社の段木の上に、何か見慣れないものが置かれているのに気づいた。近づいて見てみるとそれは兜だった。戦国時代の将軍が被るような兜。全体はつややかな青銅色をたたえ、額の部分に金色の大きな三日月があしらわれている。そんな珍しいものが、まるで今誰かがちょっと頭から外したばかり、といった風に、無造作に置かれていたのだった。
辺りに人けはなかった。ときどき風が吹いて雑木林がざわざわと揺れる。僕は暗くなるまでそこにいたが、兜の持ち主らしき人物が姿を現すことはなかった。