引っ越し

夏の終わりのある日、四人の男たちが我が家にやってくる。彼らは引っ越し会社の作業員である。四人ともちょっとたじろぐほど大きくて屈強でけっこうな威圧感があった。彼らはほとんど口も利かずに、段ボール詰めにされた荷物や家具を次々と外に運び出し、10tトラックの荷台に積み上げていった。その連携はまさしく、一糸乱れぬ、といった表現がぴったりで、僕と妻も作業をちょっと手伝おうとしたのだが、やんわりと断られてしまい、でも確かに下手に我々が手を出すより、彼らに任せきりにしておいたほうが作業はよほど早く終わりそうだった。

荷物の積み込みが終わり、我々家族は車で新しい家へと向かった。引っ越し先は同じ市内なのだが、今まで住んでいたところからはけっこう離れている。モノトーン調の三角屋根の家で、高台の上に建っている。最初はあまり気が進まなかった。子供たちが学校を行き来するのに毎日坂道を上り下りするのは大変だろうと考えたからである。どうせどこに住んでたって坂道はあるんだから、と妻が言った。彼女の言うとおりで、下関市は起伏に富んでいる。どこかへ行くのに、一度も坂道を通らないといったことはまずない。車だとそのことは意識しないが、歩いたり自転車に乗っているとそのことがよくわかる。よその土地から下関に移り住んできた人からも、そうした意見を聞いたことがある。それで最終的に我々はその高台の上の家を購入したのだった。ところで妻は、高台の上にあって街を見下ろす家、というものにかねてから憧れを抱いてもいたらしい。

到着した10tトラックから、がらんとした家の中に荷物が運び込まれる。僕と妻は荷物をほどき、家具を配置した。娘と息子はもちろん手伝うことはなく、二人で廊下を駆け回っている。あんまり騒いじゃだめよ、と妻が注意してもろくに聞かない。