煙突

ある日僕は自分が住む町に煙突のある家が何軒あるのか、知りたいと思った。それで探しながらあちこち歩きまわったのですが、煙突がある家はたったの一軒だけでした。しかしその家は空き家であったし、そのうえ銀色のアルミ製の煙突は、根元あたりでぼっきりと折れ曲がってさえいたのです。それが煙を吐き出すところを見ることもできません。僕はとりあえず、その折れ曲がった煙突を写真に撮りましたが、何となく不満足な気分が残りました。そしてこの街には他にまともな煙突はひとつもないのです。