犬小屋


近所の家に、きらびやかな毛並みをした綺麗なゴールデンレトリバーがいました。
いつも僕が家の前を通りかかると、犬は伏せた姿勢から首だけをあげて、こちらをじっと見つめました。その瞳は水色で真ん丸で、きらきらしていて、まるで今作られたばかりのビー玉のようです。その美しい瞳のために、その生き物はほとんど犬には見えませんでした。
だから僕はその犬小屋の前を通り過ぎることをいつも楽しみにしていたのです。

でも今日、犬はどこにもいません。空っぽの犬小屋だけがそこにあります。小屋のの中は狭く暗い。そばに置かれた犬の餌のためのお皿は、妙に薄汚れて見える。