廃病院の灯

丘の上の病院が閉鎖されてずいぶん経つ。病棟は取り壊されることもなく放置され、いまでは廃墟のようになっている。
夜中の2時とか3時にその建物を眺めていると、最上階の端から2番目の窓に、明かりが灯ることがあった。入院患者はすべて別の病院に移送されたので、廃病院は現在は無人のはずである。人が入ることも、ときにはあるかもしれないが、夜中の時刻を選ぶとは考えにくい。何よりその明かりの灯り方が、少し変だった。すごい速さで点滅したり、一定のリズムでついたり消えたりする。まるで子供がいたずらでスイッチを切り替えているみたいだった。僕は目を凝らして、その光る窓枠の中に人影か形を探し求めるのだが、何かが見えたためしはない。