自由

今、彼は檻から放たれた。そのことを喜ぶあまり、草原を駆け回っている。しかしある地点で足を止めた。目の前に壁がそびえていたのだった。とても高く、上のほうは雲に隠れている。手を触れてみたところ、とても固く、いかにも頑丈そうだった。

壁に沿って歩いていると、いつしか彼は草原をひとまわりしていた。つまり草原は壁に囲まれていたのだ。
彼はそのことを残念に思ったか?思わなかった。檻に閉じ込められているよりはずっとましだと思った。広くて開放的だし、監視の目もない。十分に開放的だった。むしろ壁があってくれてよかった、とさえ彼は思う。もし草原が、何にもさえぎられずに果てしなく広がっていたら、きっと途方に暮れていただろう。壁のために自由は限定される。それでいいと彼は思う。完全な自由などいらない。それは時として人を苦しめる。彼はそのことを檻の中で学んだ。正確には、檻に入るまでの過程で学んだ。彼はもう苦しみたくなかった。

壁に囲まれた草原で、そのあと彼は特に不都合もなく生きた。