きっと大丈夫

夜中、部屋の隅の花瓶に活けた百合の花を見ていた。なぜそこに百合の花があるのか、彼にはどうしても思い出せなかったが、眠れずに暗い部屋の中で目を凝らしていると、だんだん闇の中にそれが浮かび上がってきたのだった。ひとつだけまだ開いていないつぼみがあった。そのつぼみがある瞬間、突然ぱっと音を立てるみたいに、勢いよく開いた。暗闇の中に新しく出現したその花びらは、他のよりさらに白く、どこか青みがかった、不思議な光をたたえていた。
その色を見ているうちに彼はだんだん気分が軽くなった。それまでずっとある問題について悩み、苦しんでいたのだ。突如として降りかかったある厄介な問題について、彼は長く思い悩み、おしつぶされるような気分を味わっていた。そのせいで眠れずにいたのだ。
その嫌な気分が嘘みたいに消えていた。何とかなるだろう、と彼は思った。何とかなる、きっと大丈夫だ、と声に出して呟いてさえいた。
何か解決策が浮かんだわけではない。さっきまでと何も状況は変わっていない。でもその問題について考え直したとき、彼はもうさほど苦しまなかった。考えてみればそこまで深刻なことでもない、と自然に思うことができた。
再び目を閉じると、眠りがすみやかに訪れた。