穢れた揺り籠

受胎の時点であらゆる意味で穢れていた赤ん坊は夜半過ぎにようやく母体を脱した。母親は産み落とした直後に死に、その死は誰にも惜しまれなかった。産婆たちは新たに生まれた生命を祝福しようとしない。それどころか呪った。誰もが穢れた赤ん坊の顔を見た途端に悲鳴を上げた。上げずにはいられなかった。そのあまりに悪魔めいた顔つき、白い部分のほとんどない黒く丸い目、乳児らしくない乾いた、樹皮を思わせる肌、尖った耳、そして口元に浮かぶ嫌らしい微笑み。赤子は泣き声すら上げず、ただじっと虚空を見つめて、まるで生まれ落ちる以前から探し求めていたものを、今まさに見つけたといったような、奇妙に満足げな笑みを浮かべた。ただ唇をわずかに曲げるだけの微笑。そんな笑い方をする赤ん坊はいない。

毒をはらんだ凶暴な生物を扱うように人々は赤ん坊に接した。その真新しい呪われた生き物は、それにふさわしい場所へ、つまり納屋に打ち捨てられていた古い汚れた鉄製の揺り籠の中へおさめられた。それは揺り籠と呼ぶにはあまりに物々しい鉄製の檻のようなものだったが、狭く封じられたその住まいに、赤ん坊は不満そうでもなかった。彼は普通の赤ん坊のようにひたすら泣いたりはしなかった。生まれたことを悲しみ、あたたかい胎内を懐かしんで泣きわめく普通の赤ん坊とは、彼はあまりに違っていた。いつもまるで何か喜びをかみしめるかのように、あるいは何かを待ち詫びているかのように、口元にあの微笑を浮かべている。そしてその小さな、それでいて意外なほど握力を備えた手で鉄の柵を握って揺らしながら、何事かをわめくのだった。針のように鋭い、そして異様なほど長く伸びるその叫び声は、まさしく悪魔がはびこる魔界の風景に似つかわしいものだった。

穢れた揺り籠に閉じ込められたまま、呪われた赤ん坊は半ば放置された。人々は赤子と必要以上にかかわろうとしなかった。殺したり、捨てたりすることさえ彼らは怖れた。人々は赤ん坊を暗い部屋に置き去りにして、ときどき思い出したように食べ物や飲み物も与えた。餓死か衰弱死に至ってくれることを人々はどこかで望んでいた。しかしどういうわけか赤ん坊は育ち続ける。何の支障もなくすくすくと育ち続ける。一か月後にはその身体は生まれたときの数倍に膨らんでいた。今や正常な人間でないことが明らかになったその禍々しい邪悪な生き物を、もう誰も直視しようとはしなかった。
以前の悲鳴めいた声よりは意味のありそうな、それでいて人々には決して理解できない、呪文めいた抑揚に乏しい不吉な響きの音声を、ひっきりなしに口からこぼしながら、呪われた穢れた赤ん坊はいつもにやにやと、笑みを絶やさずにいた。