瞼の暗闇が、とても暗いこと


今日は変わったことの何もない一日だった。嬉しいこともなければ、ストレスを覚えることもなかった。起伏に乏しい時間がただ流れてゆくだけの平凡な一日。こんな日は意外と、人生にそう何度もあるわけではない。
夜、入浴と夕食を終えて、ソファにもたれてぼんやりとしていると、思いのほか強い眠気を覚えた。まだ午後8時過ぎなのに…そしてそんなにひどく疲れているはずもないのに。普段なら、コーヒーを飲みながら映画でも見ているような時刻である。でも眠すぎてもう何もする気が起きない。そのまま眠ってしまいたかったが、なんとか力を奮い起こして歯を磨いてから、ベッドに入った。

暗い部屋で目を閉じると目を閉じた暗闇が普段よりずっと暗く感じた。こんなに暗いものだろうか?それは本当にちょっと驚いてしまうほどの暗さだった。腹の底のあたりにずっしりとした重みを感じるような、そんな暗さだった。
やがてその暗さの中にある物体が出現した。それは丸くずんぐりとしていて、どこかウミガメに似た形をしていた。いや、僕は最初からそれをウミガメだと決めつけていた。部屋にウミガメがいることに何の疑問も抱かなかった。
ウミガメはぴくりとも動かずベッドの傍らで石のようにじっとしている。僕はそのことがひどく気に入らない。いけ好かない野郎だ、勝手に部屋に入って来て、しかも何をするでもなくじっとしているだけ。殺すか傷つけるかしたかったが、手ごろな道具もないし、どうすればいいのかわからず、結局面倒になって、何もしなかった。また目を閉じて、すべて忘れようとした。

そうするうちにまた眠ってしまったらしく、次に目を開けたときには外は明るくなっていた。ベッドの下には何もいなかった。しばらく考えたが、どれだけ考えても、あのウミガメが夢だったのかどうかわからない。とにかく目覚めの気分は決して快くはなかった。平和だったはずの一日が、終わり際で台無しにされてしまった。