怪物

首に当たる部分が存在せず、頭部は胴体にほぼめり込んでいる。手足は発育途上で止まったかのように短く、しかし分厚い筋肉で覆われていてひどく太い。全身はひどく肥え太っていて、全体のシルエットはほとんど球形である。嫌らしく垂れ下がった目と、大きく裂けた口は、絶えず好色そうな、あるいは好戦的な感じの笑みを浮かべている。
そんな怪物の石像がいくつも、廊下のいたるところに配置されていた。嫌になるほどリアルな像だった。本当にこんな怪物がかつて生きて動いていたのではないかと思えてくる。それらは何かの作用によって石にされて永遠にこの場所に固定されてしまったのだ。その考えがそれほど突飛だともだんだん思えなくなってくる。そうでなければ、いったいどんな悪趣味な芸術家が、こんな醜悪な石像をわざわざ何体も造るというのか?
廊下は果てしなく長く、そして入り組んでいた。曲がり角を曲がった直後などに、突然石像と出くわしたなどは、息が止まるような思いを味わった。何度か私は石像に手を触れた。感触は普通の石材だった。冷たくも温かくもなく、固く稠密な感じがする。

歩きながら私は何度も後ろを振り返ってしまう。ずんぐりした不気味な怪物に、こっそりと後をつけられていないかどうか確かめるために。あの怪物の群れは、私の視線を受けている間だけ、石像のふりをしているのかもしれないのだ。まるで子供の遊びのように、誰も見ていないときには彼らは自由に動いているかもしれない。それもまた愚かな、子供っぽい想像だった。でもその想像が過ちであると自らに納得させる根拠は何もなかった。そのことは私をほとんど絶望させる。

廊下の終わりはいまだ見えず、そしてどこまで行っても石像の姿を見かけなくなることはなかった。どの場所で、どの角度に視線を投げても、必ずどこかに怪物の姿をとらえた。それらは黴のように神殿のいたるところにはびこっている。疲れて足を止め、壁に背中を預けて休んでいるときにも、目の前に怪物が立って私を覗き込んでいるような気がして、満足に眠ることができなくなった。それでも何度か、気絶するような眠りに落ちたこともあったが、いつも悪夢のために目覚めた。夢にも怪物が現れ、そこでもやはり彼らはこっそりと気づかれないように私を背後から追いかけていた。ほとんど行列となって、あの嫌らしい笑みを浮かべながら、私の背中を付け狙っていた。

私には歩くことしかできなかった。手にしていたライトの電池が唐突に切れて、すべてが暗闇に包まれたとき、恐怖は頂点に達した。意味のない言葉や悲鳴や叫びが、何度となく口からほとばしった。深い闇の中では想像はもはやただの想像ではなかった。現実に怪物の群れは私の周囲で涎を垂らしながら踊り回り暴れ狂っていた。

逃げ場などない、どこにも行くことなどできないのだ、とやがて私は悟った。それでも止まることなく両足は前へと進もうとしていた。私自身の心境と、この場の状況とにまるで似つかわしくない、皮肉なほど軽快な足音を響かせながら、ひたすら私を暗闇の奥へと運ぼうとしてい