残酷な話題の時にだけ彼女の頬に浮かぶえくぼ

彼女の頬は白くすべすべして大福のようにつるんとしているのだが、話題が残酷な内容の事柄に及んだときに限り、そこに薄いくぼみが生じる。それはえくぼと呼んでもよく、実際のところ、彼女が笑顔らしき表情を浮かべるのはそんなときだけだった。見えないほどかすかなそのえくぼを目にするたび、僕はいつも、地中深くに眠る誰も知らない怪物が、ちょっとだけ尻尾を動かす、といった光景を思い浮かべてしまう。

僕はもともと彼女のまったく笑わないところが気に入っていたのだった。でも彼女がそうやって微笑しても、特に失望はしないし、それどころかますます深く彼女にのめりこんでゆくのを感じる。