4頭の青い猫

日に日に家に動物が増える…、同居人があちこちからいろんな動物を連れてくるせいだ。彼女はたんなる多頭飼いの域を大幅に超えて、もはや、動物を飼育することが一種の依存症のようになっているのだ。猫や犬、タヌキやリス、ヤギや猿、家のありとあらゆる空間は動物に埋め尽くされていて、この家はもはや動物園だった。動物の隙間に家具があり、人がいる、といったありさまである。同居人が動物を連れてくるたびに、僕はかなり強い言葉で彼女を問い詰め、叱りつけるのだが、彼女はへらへらするばかりで、まるで悪びれる様子がない。

最近またいつの間にか猫が4頭も追加されていた。4匹とも猫にしては異様に体が大きく、体毛はどこか高貴な感じのブルーで、猫らしい落ち着きはみじんもなく、顔立ちはどことなく人間っぽくて、本当に猫なのかどうか、見れば見るほどわからなくなってくる。人間が猫の着ぐるみをかぶっているみたいでもある。
4頭の猫たちはしばしば、こちらの目をじっと見つめたまま、頭を左右に素早く揺らす、という動きをした。神経を逆なでするような、挑発的な動きだった。朝、目を覚ますと、猫がいつの間にか寝室に入ってきていて、僕の顔を覗き込みながら、その動作を行っていることがある。僕は苛立ちを覚えるが、ひたすら無視する。もうずっと以前から、ここにいる動物たちに自分から干渉しないよう決めているのだ。無視していると、彼らはやがて飽きて、どこかへ行ってしまう。

今朝、リビングで、4頭の猫型の生き物が犬を取り囲んでいた。もちろんこの家で飼われている犬である。猫たちは犬に噛みついたりひっかいたり、頭で押したりしていた。ただのじゃれあいを越えて、いじめていたぶっている感じだった。はたから見ていても嫌な感じがした。
僕はある不安定な落ち着かない気分を抱えながら、そのさまを見守っていた。そのとき、4頭の猫たちが、かつてないほどに、猫とはかけ離れて見えたためだった。思わず、本当に中に人間が入っているのだ、と確信しそうになったほどだった。だってあの猫たちはさっきから何度か、2本足で立ち上がってはいなかったか?そしてあの顔には、本来無表情であるはずの動物の顔には、笑みのようなものが、嗜虐の喜びの表情のようなものが、浮かんではいなかっただろうか?…………いや、僕の見間違いかもしれない。きっとそうなのだろう。あんなのが人間であるはずはない。人間だとしたら、それはそれでひどく変で不自然なのだし、やはり珍しい種類の猫なのだろう。

哀れな犬は怯え、困惑していたが、大きい4頭の猫に囲まれて、逃げることもできない。同居人はその様子を見ながらひたすら笑い転げていた。僕もまた、犬を助けようともせずに、黙って見守っていた。動物たちに干渉しない、という自分で決めたルールのためだけでなく、あの4頭の猫と対峙することに、ひどく気おくれがした。