内陸ジャングル (Inland Jungle)

真っ黒に焼けた手がしおれた花を握りつぶす。いったい誰の手なのだろうと、しばし戸惑う。残念ながら、それは紛れもなく僕の手だった。
ジャングルは暗く静まり返っている。何か恐ろしいことが起こる前触れのような静けさだった。なぜ自分はこんなところにいるのだろう。本来いるべき場所からは遠く離れてしまっていた。何がここまで僕を運んできたのだ? 僕はしばし考えを巡らせる。あるいはそのふりをする。考えるまでもなく答えはわかっていた。僕の中にある、手の付けられない、抑えようのないある力が、僕をここまで連れてきたのだ。しかし僕はそのことについて不満を表明したい気がしていた。その力は僕にとって身の覚えのないものなのだ。それはどこかよそで生じて、知らない間に僕に取りつき、いつしか僕の内部に居座っていたものなのだ。どうしてそんなもののために、僕がこんなひどい目にあわなくてはならないのか?
遠くから音が聞こえた。プロペラが回転する音のように聞こえた。僕は空を見上げるが、白っぽい雲にいちめん覆われていて、飛行物体の姿などまるで見えない。そして音はどんどん遠ざかっていった。すぐにまたあたりは静かになった。
しばらく飛び去ったヘリのことが頭から離れなかった。何かしらの行動を起こすことだってできたかもしれないのに。僕がここにいることを知らせることはできかもしれないのに。でももう遅い。次に同じ機会が訪れるのはいつになるのか。そのことを思うとうんざりした気分になる。
粉々になった花びらが手から落ちて、地面に散らばっていた。地面の土は干からびて固く乾いている。嫌になるほどからからに乾いている。
とにかく腹が減った!でももう食べるものもない。