迷子の砂漠


太鼓に似た音と、がやがやした話し声が聞こえてきて、それにいざなわれるように歩いていたが、音は奇妙な響きかたをして、どこから聞こえてくるのかわからない。砂丘に登って、あたりを見渡してみたが、動くものの姿はどこにもなかった。目に映るのは砂漠と、その上に広がる不自然なまでに青い空だけだった。

音はついえたかと思うとまた起こり、そのたびに聞こえてくる方向は変わった。そして笑い声はどこか嘲りを含むようになっていた。僕は完全に迷っていた。疲労と渇きのために、足取りはだんだん重くなり、ついに立ち止まったとき、笑い声がはっきりと耳元で聞こえて、それは疑いなく嘲笑だった。声は層となって僕を取り囲み、もはや止むことなく響き続けた。
疲れ果てて、その場にしゃがんでじっとしていると、だんだん頭がもうろうとしてきて、それは快い音楽を聴くときの感じに似ていた。不安や恐怖が薄れてゆき、これまで砂漠でひどく迷ったけれども、結局は今いる場所が、自分の行きつくべき場所だったのだ、と思うことができた。目を閉じると、全身が金色の膜のようなものに包まれる感じがして、快い感覚はそのあともずっと続いた。