青白い駅


今日駅で後ろを歩いていた人が言っていた、この駅もずいぶん寂れたねえ、と。確かに駅はずいぶん変わった。昔を知る人が久しぶりに訪れたら、その変わりように驚くに違いない。かつてはこの駅は結構にぎわっていたのだ。広い構内にいろんな店があり、大勢の人々が行き交っていて、猥雑でごちゃごちゃしていて、まさしく駅という感じがした。今では何もない。かつての駅舎は、何年か前の大火事で焼失し、今では建て直されて全く新しくなっている。町の人口の減少に伴って、駅の利用客も減る一方であり、いつやって来ても人影はごくまばらなのだった。
通路は狭く、その割には天井が高く、どこか洞窟めいている。壁面は奇妙な青白く光るレンガで作られていて、設計者はどうして駅をそんな色に装飾しようと考えたのか不明だが、とにかくその青白い光は神秘的で、この世ならざる雰囲気を演出している。改札を出てすぐのところにお菓子屋があって、それはこの駅に構内にある唯一の店舗である。お菓子屋、と書いたけれども、本当は何の店なのかは知らない。そもそも店ではないのかもしれない。とにかくお菓子屋とか雑貨屋とかその手のお店が持つ、どことなくおしゃれでかわいげな印象があるので、僕は勝手にお菓子屋だと決めつけていた。
確かに昔の駅もよかった。でも今の青白い駅だって、ひどく寂れてはいるけれども、ひろびろとして居心地がいいと言えなくもないのだし、どことなく秘密めいた雰囲気もあって、僕は決して嫌いではないのだった。