存在しないものの影

朝起きるとカーテンの隙間から朝日が差し込んで、壁の一部を照らしていた。その細長い長方形の光の中に、紐のような形の影が落ちていた。僕は不思議に思った。そんな形の影を作るものは、部屋の中にも外にも、どこを探してもないのだ。ということはこれは存在しないものの影かもしれない。
窓辺に寄ってカーテンの隙間を閉ざすと、存在していようといまいと、影はあっけなく消えてしまった。