草むらの黒い文字

家の近くの草むらみたいなところに、黒い小さな塊のようなものがたくさん落ちていた。ごみ袋か何かかと思ったが、よく見るとカラスの死骸だった。たくさんの死骸が、まるで地面に大きなひとつの文字を書くように並べられているのだった。そうだ、確かにそれは文字の形をしていた。見ているうちに、僕の脳は勝手に、その文字を識別しようとしはじめていた。線の向きや形や角度といった情報をもとに、知識の中からあてはまる文字を引っぱり出そうとしていた。僕はその像が頭の中で実を結ぶ前にその場を去った。何の文字であれ、それを知りたくなかった。