小さな飛行場 (Small Airfield)

降り立った飛行場は荒野の真ん中だった。タラップを降りてあたりを見渡した時、まるで小人になって広い砂場に放り出されたみたいな気がした。のっぺりした黄土色の大地が広がり、彼方には灰色の山脈が連なっている。そのあまりに広大で大雑把な景色は距離感や遠近感だけでなくあらゆる認識を狂わせた。意識はまるで水みたいにあやふやでとらえどころのないものになってしまったような気がして、そのためなのか、僕はバス停でバスを待ちながら、ひどい立ち眩みを覚えていた。ほとんど倒れそうだった。人の命とは脆いものだ。それはたよりない基盤の上に偶然のようにして成り立っているものでしかない。そんな当たり前の事実がとりわけ怖ろしく感じられて、もし近くに人がいなかったら、僕はそのまま気が狂っていたかもしれなかった。僕はバス停に居合わせた人々に思わず感謝を捧げていた。彼らはみな見知らぬ外国人ばかりで、言葉を交わしたことさえなく、ここを離れたら二度と会う機会はない人々のはずだったが、その瞬間だけは、僕は彼らを抱擁したいほどに愛していた。

ときどき乾いた風が吹くほかに荒野には何の動きもない。真昼なのにぞっとするほど静かだった。誰もが押し黙ってじっとバスを待っている。バスはなかなかやってこなかった。

 

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