日食(Solar Eclipse)

さきほどまでの暴風が嘘のように、地表は今静けさに包まれている。あたりは夜のように暗いが、まだ夜ではない。日食が生じているのだ。太陽が月と重なり、空の浮かぶ黒い円の縁から金色の光が漏れている。
いまも地面はときどき大きく揺れた。
水辺の陸地に一羽の鳥がとまっていた。あたかも空を見上げるかのように、首をやや上向きに傾けている。二つの青い瞳にときどき金色の輪が反映した。人類はすでに瓦礫の下に滅んだ。全地球的なその災厄を免れることができたのは飛行可能な種族だけだった。だから日食を目撃するのもまた、鳥のほかにはいない。
また遠くで爆発が起きた。音が轟くのと同時に鳥は飛び立ち、やがて空の彼方へ消えてしまった。