角砂糖空間

その部屋は真四角で壁も床も真っ白。窓はない。温度と湿度は常に一定に(15°C/50%)保たれている。本来名称は存在しないのだが、ここではあえてその部屋を便宜的に「角砂糖空間」と呼ぶことにする。角砂糖空間に満ちる空気は、いわゆる一般的な意味での空気ではない。二酸化炭素も窒素もその他の不純物も含まれない純粋な酸素だけが100%を占める空気である。そしてその空気を伝って音楽が響いている。部屋の四隅に設置された4つの機械が音を発しているのだ。特殊な金属を用いて製造された特殊な機械であり、いずれも白に近い銀色をして、どれも似た形をしている。たとえば虹を製造する工場がどこかにあると真剣に信じるタイプの人物によって、それら4つの機械は開発された。

音は時に著しく一方へと偏り、時にあてもなく埃のように分散しながら小さな部屋に響きわたる。やはり便宜のために4つの機械をそれぞれA1、A2、A3、A4と呼ぶことにするが、A1は星の欠片を思わせる細かなリズムを、A2が地鳴りのように単調で力強いリズムを、A3はいびつな不協和音を、A4は雪解けの水のように滑らかな別の和音を作り出した。

1日に15分間だけ、4つの機械はすべての動きを停止する。それはメンテナンスのための休眠状態。その時間、部屋からはすべての音が失われる。角砂糖空間に完全な静寂が降りる。死に似た完全な静けさが支配するが、15分過ぎればまた何事もなかったように機械は再び動作をはじめ、そしてすべてが元通りに戻る。

それがこの部屋で起こることのすべて。何年も、何百年も同じことが繰り返されてきた。そしてこの先もおそらく永遠に続く。そんな角砂糖空間はどこかに、人知れず存在している。