キノコ都市

高さ212メートルの展望台の頂上から街を見下ろしていた。どの家も屋根の部分がやたら大きく横に広がっていて、その形はどこかキノコに似ている。同じような家が密集して、地の果てまでずっと並んでいた。隣には現地のコーディネーターの青年がいる。
キノコ畑みたいですね!、と僕が言うと、青年は頷いた。おそらく何度も同じ感想を旅行者の口から聞いたことがあるのだろう。どこかうんざりした様子があった。ところで僕がその青年と最初に顔を合わせて、すでに3日目になるのだが、いまだに僕は彼の顔を正面から見たことがない。向かい合って話すようなときでも、彼はいつも顔を横を向けていた。まるで僕と視線を合わせることを拒むように。最初のうち僕は、彼は何か僕に気に入らないところがあって、そんな態度をとっているのだと思っていたが、しばらく観察するうちに、そうではないとわかった。青年は僕だけでなく、誰と話すときでも顔を背けていた。だからおそらくそれは彼の癖のようなものなのだろう。それに青年は、僕に対して普通に好意的で親切だった。
皮肉なことに(と青年が言った)実際にこの街はキノコ料理が名物なのですよ。
何が皮肉なのかはよくわからなかったが、キノコ料理には興味をひかれた。キノコ畑を思わせる街の眺めが、現実のキノコに対する私の食欲を刺激したのかもしれない。
それで私が、おいしいキノコ料理の店を紹介してくれと頼むと青年は頷き、我々は展望台を降りてそのレストランへと向かった。
それは街の北東にある古びたレストランであり、メニューはキノコ料理ばかりだった。僕はキノコスパティーとキノコのガーリックソテーとキノコスープを注文した。それだけ注文しても値段は驚くほど安かったし、とてもおいしかった。繊細で力強い土の味がした。
青年も少しだけキノコマリネを食べたが(彼は非常な少食である)、食事中もやはり顔を横に向けたままだった。