彼女は血まみれ

夜の路上で血まみれで倒れている女を見つけた。女は笑っていた、大きな口を開けて、不自然なほど愉快そうに、楽しそうに。女はよく見ると、知っている人に似ている気がして、僕はつい足を止めて見てしまう。信じられないほどたくさんの血が彼女の身体を覆っている。それなのに女は平気そうにしている。ということはあれは彼女の血ではないのだろうか、別の人間の血を、たまたま浴びてしまっただけなのだろうか。ということはすぐ近くに別に傷ついた人がいるかもしれない。そんなことを考えていると、遠くから救急車のサイレンが近づいてきて、すぐ背後で止まった。救急隊員が大勢現れて女のもとにかけよった。依然として大笑いを続けている女を担ぎ上げ、担架に乗せて運ぶ途中、救急隊員の一人が、必要以上に彼女の身体を触りすぎている気がして、僕はそのことが何となく気になったが、女のほうは特に何でもなさそうにしていたので、そういうものなのだろう、と思うことにした。あっという間に彼女は運ばれてゆき、あたりには誰もいなくなって、路上には大量の血だけが残った。