地平の果て

春休みの最初の週末、家族で鳥取砂丘に旅行に出かけた。
視界にめいっぱいに広がる地平線はなだらかな曲線を描き、濃いインクみたいに青い空との境目は、目がおかしくなるほどくっきりしている。あそこまで行こうよ!と息子のケイが地平線を指さして叫んだ。

二人の子供たちはもう駆け出していた。文字通り地平線の彼方を目指して。僕と妻も子供たちを追いかけるように駆け出していた。でももちろん、どれだけ走ったところで地平線に近づけない。地平線の彼方に達したときには、また新たな別の地平線がそこにあるのだ。
やがてくたびれて僕らは足を止めた。砂漠は広く、果てしないかに思われた。僕らはなぜか無口だった。
何か小人になって、砂場にいるみたいやね、と娘のユイが言って、僕らはみんなその言葉に笑った。何がそんなにおかしかったのだろう?あるいはあまりにその表現が、僕らの実感をぴったり言い表していたからだろうか。
あっちには何があるんやろうね、依然として遠くにある地平線を指さして、ケイが言った。

妖精の国があるんだよ、とそこでは人間も妖精も、お化けも怪物もみんな仲良く暮らしているのだよ。そんなことを僕が言うと、2人の子供は、さらには妻まで、馬鹿にしたような目つきで僕を見るのだった。